【徹底比較】なぜ今、Aura ではなく LWR なのか?Experience Cloud の次世代ランタイムを選ぶべき理由と、導入の判断基準

この記事はバージョン Winter ’26 において執筆しています。
現在の動作と異なる場合がありますので、ご認識おきください。

Experience Cloud でサイトを作る際、最初に直面する選択肢。「Aura サイト」にするか、「LWR サイト」にするか。 これまでの連載では LWR を前提に進めてきましたが、そもそもなぜ Salesforce はこの新しいランタイムを推し進めているのでしょうか?

結論から言えば、LWR は 「圧倒的なパフォーマンス(速度)」「Web標準への準拠」 を実現するために生まれました。 しかし、すべてのプロジェクトに LWR が適しているわけではありません。 この記事では、LWR の技術的な優位性と、導入を検討する価値があるケース、そして知っておくべき「制約」について解説します。

LWR の何が素晴らしいのか?(3つのメリット)

LWR (Lightning Web Runtime) は、従来の Aura フレームワークを捨て、最新の Web 標準技術で再構築されたランタイムです。

① 圧倒的なパフォーマンス(ページロード速度)

Aura サイトは重厚なフレームワークを読み込むため、初期表示に数秒かかることがありました。 対して LWR は、「必要なものだけを読み込む」 アーキテクチャです。静的リソースのように軽量で、ミリ秒単位のページロードを実現します。B2C サイトにおいて「表示速度」は離脱率に直結するため、これだけで LWR を選ぶ理由になります。

② 開発者体験 (DX) の向上

Aura コンポーネントや、Aura ラッパーに包まれた LWC とは異なり、LWR は 「100% LWC (Lightning Web Components)」 で動作します。 Web 標準の DOM イベント、標準的な CSS がそのまま動作し、Salesforce 特有の「お作法」に悩まされることが激減します。

③ ピクセルパーフェクトなデザイン制御

Aura サイトでは、Salesforce 標準スタイルの上書き(!important との戦い)に苦労しました。 LWR はスタイルが素直に適用されるため、デザイナーが作成した Figma などのデザインを、ピクセル単位で正確に再現することが容易です。

導入検討する価値があるプロジェクトとは?

では、どんなサイト構築プロジェクトなら LWR を選ぶべきでしょうか?

✅ 1. 高いパフォーマンスが求められる B2C サイト

ECサイト、キャンペーンページ、会員ポータルなど、一般消費者がアクセスするサイト。「表示が遅い=即離脱」となるシビアな環境では LWR 一択です。

✅ 2. デザインのカスタマイズ要件が高い

「Salesforce っぽさを完全に消したい」「自社のブランディングガイドラインを厳密に守りたい」という場合、LWR の自由度が活きます。

✅ 3. 開発チームが LWC / モダンWeb開発に強い

LWR は「ノーコード」でも作れますが、真価を発揮するには LWC の開発 が不可欠です。HTML/CSS/JS の基礎がしっかりしているチームであれば、Aura よりも遥かに効率よく開発できます。

LWR の注意点と「覚悟すべきこと」

良いこと尽くめに思えますが、移行の障壁となるデメリットも存在します。

⚠️ 1. Aura コンポーネントは動作しない

これが最大の違いです。過去に開発した Aura コンポーネントや、AppExchange の古いコンポーネントは 一切配置できません。 全て LWC で作り直す必要があります。

⚠️ 2. フロー(Flow)の制約

画面フロー自体は LWR でも動作しますが、フロー内で使用している「画面コンポーネント」が LWR 未対応の場合があります。複雑なフローを多用しているサイトの移行には注意が必要です。

⚠️ 3. 既存 Aura サイトからの「変換」はできない

Aura サイトのボタンをポチッと押して LWR に変換…という機能はありません。「新規作成して、作り直す」 ことになります。

まとめ:どちらを選ぶべきか?

  • LWR を選ぶべき:
    • 新規構築プロジェクトである。
    • B2C 向け、またはデザイン重視のサイトである。
    • 将来を見据えて、最新の技術スタック(Data Cloud や Agentforce との親和性含む)に投資したい。
  • Aura を選ぶべき:
    • 既存の Aura 資産(コンポーネント)を大量に再利用したい。
    • 社内向けポータルで、速度やデザインよりも「標準機能の豊富さ」を優先したい。
    • 開発リソースがなく、完全に標準テンプレートのまま使いたい。

Salesforce のロードマップは明らかに LWR に向いています。今から学ぶなら、間違いなく LWR です。

参考URL

What Are LWR Sites for Experience Cloud?

LWR Template Limitations

読者の声

タイトルとURLをコピーしました